ご挨拶

会長あいさつ

当会は、故李秀賢(イ・スヒョン)君の勇気ある行為を長く顕彰するのと共に、母国と日本の架け橋になろうという彼と同じ志を抱いて日本語学校に学ぶアジア諸国からの語学留学生を経済面で支援する奨学金事業を行う目的で発足しました。
 そもそもの発案者は李秀賢君のご両親でした。秀賢君が亡くなると、事故を知ったたくさんの方からお見舞い金がご両親の元に寄せられました。ご両親は、このお金を日本で秀賢君と同じように学んでいる日本語学校生のために役立てたいと、奨学金設立を提案され、1000万円を寄付されました。この趣旨に賛同した方々のご協力を得て、秀賢君の一周忌に当たる2002年1月26日、当奨学会がスタートしました。その後、多方面からご支援を頂き今日に至っています。
 日本で大学レベルの知識や高度の技術を身につける機会に挑戦するには,まず日本語を習得しなければなりませんが、この入口の段階で語学留学生は経済面の問題に遭遇します。彼らの多くは所謂私費留学ですが、語学留学生を対象とする奨学金は殆ど存在しません。こうした中、当奨学会は、将来アジアの国々との架け橋となる有為な人材に対し、入口段階での支援を行なうことに意義があると考え、これまでに800名近いアジア出身の語学留学生に奨学金を渡すことが出来ました。この間ご支援頂きました皆様に改めて感謝申し上げます。
 私は2016年6月、谷野前会長からバトンを受取りました。私自身も外務省の出身で、日本の外交に長く携わっております。そして2001年、あの痛ましい事故が起こった時、私は公使として韓国に赴任しており、日本政府を代表して釜山で行われたお葬式に参列いたしました。 その時から李秀賢君のことがずっと心に残っておりましたので、この度当奨学会に携わることになり,とても喜ばしく又ご縁を感じています。
 今後とも当奨学会の草の根ボランティア活動が、アジア諸国からの語学留学生との交流を通じ、アジア諸国との相互理解に資することになれば幸いと思います。今後とも皆様のご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。

遺族あいさつ

息子の秀賢を送ったのが昨日のことのように思われますが、いくら年月が経とうとも私は秀賢と秀賢を憶えてくださっている皆様のことを忘れません。 

 秀賢は自分の夢を果たせないまま短い生涯を遂げたと言われますが、私はそうとばかりは思いません。当時、消極的だった日韓の民間交流が、いま現在のように活発になってきた要因の一つとして、秀賢の行動が動機付けとなり、どの外交官よりも多大な貢献をしたということに、だれも否定はしないと思っております。これこそが秀賢の本当の夢だったのではないかと思っており、誇りに思います。

 そして、秀賢を愛する多くの日本の皆様の温かいお心と崇高な志が集まりLSHアジア奨学会は設立されました。

 奨学金を受けた各国の日本語学校生たちを思い出しますと、自分の夢に向かって日本を学んでいる彼らの輝く瞳は秀賢と同じでした。彼らみんなが秀賢のことを想いながら広い世界で大きなことを成し遂げる人になるようにと願っております。

 また、2006年の偲ぶ会6周忌にあわせて映画「あなたを忘れない」が製作され、試写会には光栄にも天皇皇后両陛下がご親臨なさいました。

 このようなすべてのことは、悲しみを乗り越えて新たな希望に昇華された真に美しい賜物と思うとともに深く感謝しております。

 いままで自分のことのようにお手数を惜しまない皆様に感謝いたすとともに、LSHアジア奨学会のさらなる発展を祈願いたします。